05 | 2017/06 | 07

「涙つぼ」  ~ルキアの祈り~   (前編) 

* 涙つぼ:戦地へ旅立つ前に無事を祈る妻が、涙を入れて夫に渡したといわれるガラスの小さな壺。


昔々のお話です。

都から遠く離れた大きな森のそばに小さな村がありました。
その村の片隅で幼馴染の2人が結婚し、小さな家を構えました。

お嫁さんは、カラスのように黒く艶やかな髪をした小柄な人。
その小さな顔には紫水晶のような瞳が、長い睫毛に縁取られてキラキラと輝いています。

だんなさんはオレンジ色の髪で、琥珀色のやさしげな瞳をした人。
自分で伐った木を材木にし、家を建て、テーブルを組み立て、椅子を作り、
2人で暮らす愛の巣を立派に仕上げた器用な青年でした。

幼い頃から仲の良かった二人は、当人も周りの人も疑う余地も無く、自然に結ばれました。
一緒にいる事があたりまえな存在だったからです。

秋に一緒に暮らし始めた2人に初めての冬が訪れ、やがて草木が萌える春が巡ってきました。

さて、その頃国の中心の都では、隣国との揉め事が収まらず、とうとう戦となってしまいました。
そして国中の若者に、出兵の要請が出されたのです。
もちろん都から遠く離れた小さな村の青年のところにも・・・。



青年が戦地へ向けて旅立つ日の朝の事です。

「なー、1本でいいんだ1本で。
 減るもんじゃなし、いーだろ1本くらい!」

「馬鹿な事を言いおって、この色ガキが!!」

「お前、俺の事が心配じゃねーの?
 昔から恋人や良人(おっと)が戦地へ行く前に『必ず私の元へ戻って来て』
 っつう祈りを込めて、女の方から贈るモノなんだぞ。」

「私はそんな事は知らぬし、貴様は矢に当たったとて簡単にくたばるような
 ヤワな男ではなかろうがっ。」

「気持ちの問題なんだよ、キモチの。なっ、俺が欲しいんだからよっ『お守り』。
 ・・・お願いですっ、下さいっ!!!」



小さな村から戦地へ向かう一団の、一際目立つオレンジ色の髪の青年が、肩を落として歩いて行きます。
見ると頬には5本の赤いすじが、痛々しく付いていました。


夏になりましたが、戦はまだ終わりそうにありません。
そんなある日、黒髪のお嫁さんの所に、戦地から初めての便りが届きました。

戦地は海に近く、生まれて初めて海を見た事。
1日中船に乗っていて、すっかり日に焼けてしまった事。
そして・・・

「アレを見つけた。お前の気持ちが嬉しかった。
 戦はじきに終わりそうだし、安心して待ってろ。」

夫からの初めての手紙を読みながら、お嫁さんの頬は赤く染まるのでした。



二人が暮らし始めた家に、再び秋が訪れました。
木々の葉が落ち夜空の星がたくさん見えるようになっても、いつも隣で美しい星々を眺めた愛しい人の姿はありませんでした。

木枯らしが吹き始めた頃、とうとう待ちに待った知らせが届きました。
『戦争終結!!和平交渉開始!!』
厳しい冬に戦を続ける愚行は、どちらの国も犯しませんでした。

都から離れた小さな村も、ようやく家族がそろう幸せに浮き立ち、人々も笑顔がふえました。
集団で戦地へ赴いたのに、帰りは一人、また一人・・・と単独で村へ戻って来る男達。
今日もどこかの家で、無事帰還の祝いが行われる事でしょう。

ところが初雪が降るまで待っても、お嫁さんの待ち人は戻って来ません。
そして地面がうっすらと白くなったある朝、お嫁さんは海辺の町へだんなさんを探しに行こうと決心しました。

お嫁さんの気持ちは痛いほど分かるものの、村人達は断固として出発を許しませんでした。
何故なら・・・

「そんな身体(からだ)で村を出たら、お前がどうにかなってしまう。」

お嫁さんは、じきに臨月を迎える身重だったからです。



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・・・こんな中途半端なところで続く・・・だと?

作中一護が欲しがった1本とは、もちろんヘアーのことです。アンダーの。
これも戦地へ赴くイイヒトが自分を忘れず、自分を抱くために戻って来て・・・という祈りが込められているのです。



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コメント

春画の大家、麻生由美子様へ

麻生由美子様

こんにちは由美子さん!!
度々のご訪問とコメントをありがとうございます。
記事や作品についての意見や感想をいただける事はとても嬉しく、本当に励みになっています。
心から感謝しています!!

作中の『お守り』ですが、これは以前読んだ「富野由悠季」の小説から仕入れました。
はい、「機動戦士ガンダム」です。スミマセン。ちょっとテレがありました!!

『涙つぼ』に関しては私にとっても新しい単語なのです。
でもコレを知った時、是非イチルキSSの小道具にしたくて、そこからストーリーを作りました。
何かとても綺麗で、愛情にあふれた存在のように思えたので・・・

> 後編を楽しみにしております(^^
> 旦那さんは無事に帰って来て、妻と子に会えるのか!?

楽しみにして頂けて光栄ですっ!!
なんだか無駄に長くなりつつあるので、現在整理しているところです。
早く公開できるように頑張ります。

由美子さん宅もメニューがふえてますます素敵になりましたね!!
またいろんなv-344を頂きにお邪魔させてもらいます。

>作中一護が欲しがった1本とは、もちろんヘアーのことです。アンダーの。
>これも戦地へ赴くイイヒトが自分を忘れず、自分を抱くために戻って来て・・・という祈りが込められているのです

やっぱり…!!(笑)
二人の会話部分読んでてそうではないかと思いましたが、実際にそういう事は行われていたのですね。勉強になるわ〜ww『涙つぼ』という言葉も、今回初めて知りました。
嫌がってたのに、何だかんだで一護にあげたんですね〜、ルキアったら♪
愛ですね♪♪(笑)

後編を楽しみにしております(^^
旦那さんは無事に帰って来て、妻と子に会えるのか!?

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