08 | 2017/09 | 10

「ヘビイチゴ」 

15000HIT御礼のSSだったのですが・・・



「面白眉毛副隊長殿、こんな所で何をしていらっしゃるのです?」

初夏を思わせる青々とした空の下、爽やかだが熱を孕んだ風が、赤く流した髪と派手な色彩の袖を通り抜けた。

「なんで俺がいるって分かったんだ?」

席官でもないルキアの霊圧探査能力の高さに舌を巻きつつ、恋次は尋ねた。

「そんな派手なモノを纏っておるのは、京楽隊長と恋次くらいのものだ!!
 しかも京楽隊長が羽織っておられるモノとでは、品が全く違うしなっ。」

霊圧探査能力には微塵も触れず、ルキアは飾り気のない笑顔と勝気な口調で、からかうように言い放った。


他隊を巡って決裁をあおぎ、ひとかかえの書類と共に十三番隊に戻る道すがらにあるここは、日当たりの良い南西の見渡す限りの草原だ。

「副隊長殿は非番だと兄様から伺っていたのだが、草しか生えておらぬところに
 一人きりで何をしておったのだ?
 さてはどこぞのおなごと逢引の約束か?」

「んなトコで何するってんだよ。ばかか、おめーは!!」

めったに言葉を交わすこともない二人だが、会えば昔のように気安く話せるようになったのは、あの戦いの後からだ。

胸の前の風呂敷包みを抱え直そうと立ち止まったルキアに、恋次は無言で近づくと、ルキアの両手から風呂敷包みを軽々と片手で持ち上げ「ニッ」と笑ってみせた。

「汗、かいてんぞ。」

差し出されたもう片方の手には、ウサギ模様の手ぬぐいが握られている。

「ありがとう。でも、新品のようだが?」

「可愛いだろ?朱鷺(とき)色にウサギが白く抜いてあって。
 これ見せたらおめーが喜ぶだろうって思ってよ。」

「私のために?」

二人がやわらかな草の上に並んで腰をおろすと、恋次はこの手ぬぐいを見つけて買うまでの経緯を 事細かく話し始めた。
いつもより饒舌な恋次の笑顔につられて、ルキアの表情もやわらいでいった。


 これを渡すために、非番の日にわざわざ人目のつかぬ場所で
 私を待っていたのか、恋次・・・


そんな事を思い巡らしながら恋次の話に耳を傾けていたルキアだが

「あれ、ヘビイチゴじゃねーか?」

という声で恋次の指さす方へ視線を移せば、なるほど赤く丸い実がいくつも顔を覗かせている。


「本当だ!!何十年ぶりだろう。懐かしいな、恋次!!」

声をあげ、思わず近づき色づいた実を摘まむと、口の中へ放り込むルキア。

「甘くないっ!!」

顔をしかめるルキアの側に近寄ると、恋次の口元に赤い実を摘まんだ白く細い指が近づいてきた。


 食っちまいてぇ・・・


本能の扉が開かれようとしたその瞬間、ルキアの桜貝に似た色艶の親指の爪ほどの大きさのソレが、恋次の口に入って来た。

「~~~うへぇ、まじぃ!!こんな味だったかコレってよ。」

ヘビイチゴは、足の先から悪寒が走るほどまずかった。
甘くもなければ酸っぱくもない、得体の知れぬこの味・・・

「戌吊で暮らした頃は、コレで腹を満たした事もあったのに、
 贅沢に慣れてしまったのかもしれぬな。」

ルキアは恋次から少し離れた場所にうずくまり、ヘビイチゴを摘まんでは口に運んでいる。
ヘビイチゴを見つめるその紫紺の瞳には、先程にはない優しさが感じられ、恋次の胸はジリリと痛んだ。

 
 あいつの事を考えてやがる?


副隊長とはいえ、特別な用向きもなく「姫」に会いに朽木家を尋ねることもはばかられるし、仕事から六番隊へ戻る道すがら十三番隊に寄りました・・・などと都合の良い行動も取れない。
また何故か非番の日が重なることもない現状では、何か「目的」がなければ「会う」事もままならない。

ウサギ柄の手ぬぐいを見つけたときは嬉しかった。
目立つものではなし、隊長に見とがめられるはずもなく、ルキアが抵抗なく受け取ってくれる物に出会えたから。

でも「ヘビイチゴ」はまずったと、すぐに後悔した。
あいつを連想させるモノをわざわざルキアに知らせて・・・


だが目の前のルキアからは、現世の子供の事を口にする素振りは見られず、恋次の心は次第に落ち着きを取り戻しつつあった。

「おいルキア、もう食うのよせ! 腹こわすのがオチだぞ。
 ちょっ、そいつはまだ熟れてもいねぇ『赤』どころか『朱色』じゃねーか!!
 それ食うぐらいならツバ飲み込んだ方がマシだぜ。」

ルキアが摘み上げたヘビイチゴは、まだオレンジ色をしていた。
ところがルキアはソレをまじまじと見つめた後、熟れていないイチゴを口に含み上下の歯でしっかりと噛みしめた。

「~~~~~!!」

どんなに我慢しても思わず眉をひそめる味が口中に広がった。


 硬くて、青い味のするイチゴ
 「時の流れ」がコレをどんな味に変えるのだろう・・・


いつの間にか西の空を 誰かの髪と同じオレンジ色に染め始めた太陽を眺めながら、ルキアの瞳はさらに遠くを見つめているのだった。


----------------------------------------------------------


語呂合わせで一護の話になるはずだったのに出てこない。
しかも恋ルキ→イチ・・・



『ラララ言えるかな』読み物もくじへもどる→こちら
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

(コメント編集・削除に必要)
(管理者にだけ表示を許可する)

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://bunsuirei8019.blog93.fc2.com/tb.php/288-f8ba086c